大人になれるまで

白い円と申します

ヤッホー茶漬け「志な野」

金沢は片町には「ヤッホー茶漬け」と呼ばれし謎のお茶漬け屋がある。

 

店名は「志な野」。店主の体力低下が原因で最近閉店してしまった。

 

なぜヤッホー茶漬けなのか。それはこの店独自のルールが関係している。

 

 

店に入り、着席するとスマホは厳禁。机の上に置こうもんなら「機械ダメ、しまって」と注意される。メニューは何品かあるのだが、有無を言わさず「ヤッホー茶漬け」の具(シャケ・昆布・梅干し・おしんこ・たらこetc)と丼にはいったご飯を出される。このご飯なのだが、普通に食べようとするとホギホギして非常に食べづらい。しかし、出汁をかけるとバゴバゴ飲める。志なのでは飲む用のご飯を炊いているのだ。

 

 

まず一杯目をいただく。味は正直言って普通においしいお茶漬け。さて、おかわりを………

 

 

「ヤッホーーーーー!!!!!」

 

 

そう、この店では全てのやりとりが「ヤッホー」の一言で完結するのだ。実に面白い。あとから「何ヤッホー食べた?」とか話せるしね。

 

 

とにかくヤッホーヤッホーと叫んでお茶漬けをかっこむ。その日は夏の暑い夜だった。店内に空調設備はなく、その中で熱いお茶漬けを食べ続けるのは苦しかった。

すると

 

「横からヤッホー」

 

店主の奥様が冷たい麦茶を提供してくれた。

 

なんて、なんて優しいヤッホーなんだろう。

 

横からヤッホー麦茶のお陰で私は4ヤッホーすることができた。

 

 

お会計を終え、ごちそうさまでしたの代わりにヤッホーと言う。店主、奥様が「ヤッホー!」と返す。

 

 

とてもいいお店だった。

片町の夜、あの狭い裏路地から「ヤッホー!」という叫び声が聞こえなくなったと思うと少し寂しく感じる。