大人になれるまで

白い円と申します

たばこ

大学生の頃に書いた文章です。今となっては紙巻からアイコス、そしてVAPEへ移行しています。アメスピ懐かしいなあ。

 たばこ

 

最近、煙草を吸うようになった。

二十歳になったもんだしなんとなく大人の格好をしてみたいなという気持ちからの行動だ。(私の喫煙初体験は十九才の夏だったが) 煙草を吸っていると知られると「身体に悪いよ」「男受けが悪くなるよ」「お金がかかるよ」など周囲から色々言われる。近頃は嫌煙家が増え分煙活動なるものも進み、喫煙者は肩身が狭い思いをすることも多い。

しかし私はそんなお金と健康と見てくれの無駄遣いや肩身の狭さに惚れたのだ。そもそも煙草イコール肺癌というイメージが間違っている。一〇〇歳近くになってもぷかぷかと煙を吐いてる爺さんだっているじゃないか。いつ誰が癌になってもおかしくない現代で「煙草を吸うと肺癌になる!」と怯えること自体がナンセンスだ。やらない後悔よりやる後悔、ひとは都合のいいことを言うくせに。

 

肩身が狭い、と前述したが、私は喫煙所の縮こまった空間が大好きだ。ここにいる者は
みな「煙草吸い」という括りに属しているということが私に多大なる安心感をもたらす。銘柄の違う煙同士が「今日はじめじめしてて嫌ですね」「わかります」と無言の会話を交わしているような気さえする。喫茶店の喫煙席も好きだ。ふかふかのソファがあっておいしいコーヒーがあって、そのうえ煙草まで吸っていいんですか。田舎のおばあちゃんのような寛大さを感じる。


だが、喫煙者の輪の中に入ってもなお肩身の狭さを感じさせられるときがある。

それは私の吸っている煙草の銘柄が原因だ。友人に一本もらって以来虜になってしまったアメリカンスピリットというものを吸っているのだが、これまた「吸いにくいのに」「値段が高いのに」など色々言われてしまう。

違う、吸いにくいのはおいしさの証(と勝手に思っている)なのである。吸っている途中で火が消えてしまうこともままある。吸いかけの煙草にライターを添えるのが不格好なのはよくわかっているが、とにかくおいしいから吸ってみてくださいと言いたいものだ。値段については高いのは確かだがその分一本を吸い終えるのに時間がかかるからコストパフォーマンス的にはあなたが吸っているそれとはあまり変わりないように思う。

 

ところで、喫煙者のみなさんは最後の一口を決める時にどういう思いを抱いているんだろうか。私はいつも「もう終わりにしよう、いや、あと一口いける...まだ...」と指先に熱を感じながらもチビチビと吸い続けてしまう。これはラーメンのスープをお冷と交互に「あとひとすすり...」とやってしまう感覚に似ている。

いつか喫煙所で「今あなた何をもってそれを最後の一口と決めたのですか」と赤の他人に訊いてしまいそうでこわい。こんな文章を書いていると煙草を吸いたく
なる。ですがみなさん、煙草はあなたにとって肺気腫を悪化させる危険性を高めますし男受けも悪くなるし出費がかさみますよ。

 

 

追記アメリカンスピリットを吸った後に蕎麦茶を飲むとこの世のものと思えないほど
の香ばしさと甘味が口いっぱいに広がり、とてもおいしいです。